THE STORIES OF FLY FISHING 2
「Megan Boyd / Kiss The Water 」の巻
2013年スコットランドBBCより異才のアトランティックサーモンフライタイヤ― Megan Boyd (1915-2001)、彼女の生涯をドキュメントタッチで描いたムービー”Kiss The Water” が発売されました。 当時発売と同時に話題になり、私もすぐさま購入してじっくり鑑賞しました、アトランティックサーモンフライに興味がある方は必見の作品です。
メーガンの作るサーモンフライはまるで魔術を使った如く魚を引き付ける神秘に満ちた特別なフライであったので、英国はもとより世界中のアトランティックサーモン・アングラーがこぞって買い求めました。 チャールズ皇太子もその一人でした、英国皇室からのサーモンフライ製作の依頼、女王からの勲章授与などの輝かしい評価の一方で彼女は隠遁者の様な質素な暮らしを愛してあまり人前にでるのは好きではなかった様です。
このムービーを通してメーガンの人となりに触れ、彼女のフライの神秘に想いが巡ります。 現在のサーモンフィッシングではクラシカルなフルドレッシングサーモンフライは殆ど使われる事はありません、しかしモダンサーモンフライの根底には長いサーモンフィッシングの歴史の中で培われた膨大な英知が脈々と息づいています。
アトランティックサーモンフライの歴史を訪ねる旅をはじめてみませんか。
THE STORIES OF FLY FISHING 1 「アイヌ漁師と柳の棍棒」の巻
アトランティックサーモンフィッシングの世界で誰もが知るレジェンドHugh Falkus、彼の名著の一つ“SPEYCASTING A NEW TECHNIUE” の中に何故かAINUの文字が唐突に出てきます。
スぺイキャスティングの教本にアイヌが登場?なんとも不思議な想いがありましたが、それは人類学者チャールトンS.クーン(アメリカ人1904~1981年)の著書The Hunting People(狩猟民族)の中に記された“アイヌ漁師と柳の棍棒”に関する一節でした。
それでは以下にその翻訳文に紹介します。
アイヌの漁師が鮭を釣り上げ、釣り針や銛をから外した時、魚はまだ元気だ。
気絶させるために、各人が柳の木でできた2フィートの棍棒を持ち、それで魚の頭を叩いた。
アイヌの創世神話によると、最初の人間の背骨は柳でできており、柳は最も高貴な木であると考えられていたからである。
他の木の棍棒や石で叩くと、翌年は魚が来なくなると信じられていた。
カールトン・S・クーン著『狩猟民族』(1971年)
鮭が戻らなくなってしまった今、にわかにアイヌ文化に興味が湧いてきました。